Location:Home > More > Turbo SCHWITZER › SERIES > 医学書院/週刊医学界新聞(第3254号 2018年01月01日)

医学書院/週刊医学界新聞(第3254号 2018年01月01日)

Time:2019-03-05 23:32Turbochargers information Click:

01 医学 書院 週刊 医学界

第3254号 2018年1月1日 2018年
新春随想

都道府県を主体に進む,地域に合わせた医療政策 遠藤 久夫(国立社会保障・人口問題研究所所長)

 2018年度は医療政策において都道府県の役割が格段に拡大する一年である。国民健康保険の安定的な運営を確保するため,市町村に代わり都道府県がその財政運営の責任主体となる。これまでの機能の一部は市町村に残るが,都道府県は市町村ごとの納付金の決定など重要な役割を担うことになる。

 2018年度から始まる第7次医療計画では地域医療構想が盛り込まれた。地域医療構想とは地域ごとに予想される医療需要に合わせて,機能別に病床数を再編するものである。大都市を中心に後期高齢者が急増する一方で,地方は人口減少が進むという予測が背景にある。病床数の再編は関係者の話し合いによって進めるのが基本だが,都道府県は議論の場を提供し音頭を取るという重要な役回りを果たさねばならない。

 地域医療構想は在宅医療提供体制の数値目標も示しており,介護との連携も重要となる。2018年度には新しい医療計画と介護保険事業計画が同時にスタートする。これらの計画の整合性を確保するため,都道府県による協議の場の設置が求められている。

 都道府県が行ってきた医療費適正化計画においては,2018年度から糖尿病の重症化予防,後発医薬品の使用促進等の新しい項目が追加されバージョンアップし,さらに保険者としての都道府県のガバナンス強化も求められている。また,医療費適正化の一環として,都道府県の特定地域に全国とは別の診療報酬を設定することができる高確法(高齢者の医療の確保に関する法律)第14条の運用についても関係審議会の俎上(そじょう)に乗っている。

 2018年度から新専門医制度が開始する。それに伴って医師の地域偏在が現在以上に進まないよう,各都道府県に協議会が設置された。協議会は,地域偏在に関して日本専門医機構や学会に改善要求ができる。

 基本方針は国が定め,都道府県が地域事情に合わせて実行する。高齢化や人口の見通しが地域ごとに異なり,また医療資源や医療費に地域差がある現状では,このような方針は基本的に正しい。都道府県の中には戸惑いも見られるが,今後,医療政策のプレーヤーとして存在感を増していくのは間違いない。このことは医療関連団体にとっても大きな環境変化だと言える。

「持続可能な社会」の医療 森 臨太郎(国立成育医療研究センター政策科学研究部部長・臨床疫学部部長/コクランジャパン代表)

 成熟しつつある日本の社会全体の持続可能性を考慮し,その中に医療制度を位置付けると,社会のみならず医療においても価値観の転換が迫られていることを実感する。持続可能な医療制度に関連する議論の多くは,いかに医療費の無駄を減らすか,自己負担額を増やすかに終始しているように見える。確かに,医療そのものの無駄を減らすことで効率を最大限まで高め,自己負担額や保険料の見直しにより財政規律を高めることは,目の前の問題を解決するには重要で,喫緊の課題であることは十分に認識できる事実である。

 ただ,それだけで持続可能な社会の医療制度が実現するのかというと,全く心もとない。医療もその周辺にある経済活動や研究活動と無縁ではない。人口減少は医療従事者のなり手の減少でもある。次々と新しい医療技術が開発され応用可能になる。一般的な経済活動では,新しい技術が開発されると旧来の技術は安価になり,高度技術者の手から離れていくが,医療分野においてこの動きは鈍い。また,多くの経済活動は,その需要や市場を開拓し広げていく傾向にある。地球全体の資源に向き合い,社会全体の持続可能性を考慮したとき,新しい時代の医療はその価値観の変容も求められていることがわかる。

 医療本来の目的とは何だろうか。死亡を防ぎ寿命を延ばすことから,生活の質を向上することに転換してきたが,その先にはより主観的な幸福や人生の充実を求めるのであろうか。程よいレベルの医療を確保しながら,全体の価値に衝突しない程度に,主観的価値観を妨げない医療制度をめざすのであろうか。

Copyright infringement? Click Here!

Related reading
Related recommend